豪華クルーズとは違う生活がピースボートクルーズ

飛鳥2やダイヤモンドプリンセスとはかなり違うピースボート

ピースボートの船旅は、世界一周約100日間のクルーズです。ピースボートクルーズでは、どのくらいの洋上生活があるかご存じでしょうか?ピースボートクルーズのパンフレットによれば、旅の約3分の2が洋上となります。つまり、約2ヶ月間は船の上で過ごすことになるため、洋上生活をどう楽しむかを考える必要があります。「船旅=船内生活は暇」と思っている方も多いのではないでしょうか?

ピースボートの地球一周クルーズで使用されているのは、「パシフィックワールド号号」という1994年にイタリアで建造された比較的新しい船です。総トン数は77,441トン、全長261.3メートル、全幅32..25メートルとかなり大型の本格外航客船で、乗客定員数が2,250人というのも驚きです。

ピースボートの船旅において、船内で過ごす割合は約7割と言われています。具体的には、各クルーズによって寄港地の数や寄港日数が異なるため変動がありますが、おおむねこの割合であると言われています。

このような数字を目にすると、「船内って暇じゃないのかな?」や「船の中で毎日何をしているの?」と疑問に思うかもしれません。しかし、ピースボートには一般的な豪華客船クルーズとは一味も二味も違う、船内生活の楽しみ方があります。今回は船内での生活に関する基本情報から楽しみ方まで、様々な角度から船内の様子をレポートします。

部屋と食事について

クルーズ中は部屋が我が家となります。ピースボートクルーズでは、大きく分けて4種類の部屋があります。

  1. フレンドリータイプ
    2段ベッドが2つ設置されている4人部屋です。この部屋は、旅行代金をできるだけ抑えたい方や、一人参加で友達を作りたい方に人気です。ほとんどの方が一人参加者で、部屋のメンバーは性別や世代などを考慮して旅行会社で割り振られます。まれに「4人部屋希望だけど、一緒に参加する友人と同じ部屋がいい!」という方もいらっしゃいます。その場合は、同部屋希望を申請することで、同じ部屋になることも可能です。
  2. ペアタイプ
    夫婦や友達同士での参加におすすめの部屋です。ベッドが2つ設置されており、シルバー世代のご夫婦に人気です。ハイグレードのお部屋では、プライベートバルコニーが付いているものもあります。
  3. セミシングルタイプ
    「ペアタイプ」の相部屋バージョンで、「一人参加だけど安価にプライベート空間も欲しい」という方に人気の部屋です。ベッドとベッドの間をカーテンで仕切ることができます。
  4. シングルタイプ
    部屋でゆったりと一人静かに過ごしたい人におすすめです。

全ての部屋には共通して、シャワー・トイレ・テレビが備えられています。各タイプごとに窓ありと窓無しの部屋があります。「ペアタイプ・バルコニー付き」の部屋にはバスタブと冷蔵庫が完備されています。

パシフィックワールド号の食事

毎日の食事は旅行代金に含まれているため、食べる度にお金を払う必要はありません。船内には複数のレストランがあり、その日の気分や好みに合わせて、好きな場所やメニューを選ぶことができます。

食事は本格的な洋食のコースメニューや和食、軽食ビュッフェなどバラエティ豊かで、飽きることはありません。ベジタリアンやアレルギーに対応したメニューも用意されているので、安心して食事を楽しめます。寄港地に着いた際、多くの方は現地で食事を楽しみますが、「どうしても現地の食事が合わない」「無性に船での食事が食べたい」と感じることもあるかもしれません。その場合も、船のレストランは寄港中も食事を提供しているので、船内で食事を取ることができます。

「できるだけお金を節約したい」という方は、観光の途中で船に戻り、船内で食事をしてから再び街に繰り出すという方法もあります。

パシフィックワールド号の船上生活

ピースボートで世界一周旅行をしました。

ピースボートクルーズに乗って感じたのは、「船内生活こそがピースボートクルーズの楽しさ」だということです。寄港地よりも船内生活が楽しいと感じました。船旅と聞くと、タイタニックのような豪華客船で年配の方やシニア世代が多く参加しているイメージがあるかもしれません。社交ダンスやエンターテイメントショー、カジノなどがあるのではと想像していました。

例えば、日本郵船の飛鳥2、三菱重工のダイヤモンドプリンセス、商船三井のパシフィックビーナスなどの豪華客船は、私のイメージに近い雰囲気だと思います。しかし、ピースボートでの世界一周旅行では、豪華客船とは全く異なる楽しさがありました。ピースボートには、若者が多く乗船しており、自分たちで企画を立ち上げて楽しむ姿が見られます。また、シニア層のバイタリティも素晴らしく、若者に寛容でコミュニケーション力の高い人が多いと感じました。

予定は船内新聞でチェック

船の上で演奏

多いときには、1日で100個近くの企画がピースボートの船内で実施されます。毎日の船内企画の予定表となっているのが「船内新聞」と呼ばれるものです。船内新聞は、ピースボートの船オーシャンドリーム号内で発行されます。

「船内新聞」には、その日の船内企画の告知が紹介されており、反対のページには船のどの場所で何時にどんな企画が行われるのかが記載されています。「船内新聞」は、日本の新聞のテレビ欄のように、何が行われるのかが一目で分かるようになっています。ピースボートの洋上生活では、この「船内新聞」をチェックして、「明日はどれに参加しようかなぁ~」と乗客自身が考え、翌日の予定を立てるのです。

ピースボートの船内企画一覧

ピースボートの船内生活はどんな企画があるのでしょうか。

船内新聞と船内企画

船内生活が始まると、毎晩「船内新聞」が配られます。船内新聞には旅のコラムや参加者の紹介などの記事の他、テレビ欄のように時間軸と船内のスペース名軸が書かれたコマ割りの表が載っています。「いつ・どこで・どんな企画があるか」が掲載されているため、船内生活をより楽しむための必須アイテムとなります。企画は講演会やワークショップ、同好会のお誘い、音楽イベントなど、多種多様です。

開催される企画には大きく分けて3種類があります。

  1. ピースボートのイベント企画
    「洋上大運動会」や「夏祭り」、「アースデイ」など、比較的大規模なイベントや、水先案内人と呼ばれるゲストの講演会や発表会などは、ピースボート事務局が企画しています。
  2. ジャパングレイスの寄港地企画
    寄港地に関する基本情報や見どころ、注意事項などを伝える「寄港地説明会」など、旅に関するお知らせの企画があります。
  3. 参加者による自主企画
    参加者自らが特技や趣味を活かして企画するサークルのようなもので、ピースボートクルーズの大きな特徴の1つです。ジャンルの制限はなく、誰もが自由にイベントを企画することができます。
洗脳されるぐらい楽しいゲスト人

水先案内人(ゲスト)

ピースボートには「水先案内人」と呼ばれるゲストが乗船します。水先案内人とは、ピースボートが作った造語で、船用語の「水先案内」から来ています。水先案内とは、港から船が離れる際にその港近辺に精通した人が乗り込み、道案内をしてくれる人を意味します。

ピースボートの水先案内人とは、船内にお招きするゲストを指します。世界一周中は、国内外問わず様々な分野のゲストが約20人ほど乗船し、船内を盛り上げてくれます。水先案内人の方々は、世界一周の間ずっと乗っているわけではなく、5日~30日ほどの短期間の乗船となります。各分野に特化した話をしてくださいます。

水先案内人ゲストの中には、名前を聞くのが初めての方もいるかもしれませんが、参加してみると意外に面白かったり、数年後には専門家として新聞やテレビのコメンテーターをしている人もいます。どんな水先案内人ゲストが船に乗ってくれるのか、楽しみにしていいでしょう。興味が湧かない企画でも、講演経験が豊富なゲストだと、言葉で引き込まれ、自然と興味が湧いて好奇心がくすぐられることもあります。

ピースボートの水先案内人ゲスト一覧

私自身は最初、水先案内人ゲストに興味がありませんでしたが、世界一周中に気軽に水先案内人ゲストの話を聞きに行きました。すると、新しい知識や知らなかった出来事、驚きや発見が水先案内人の企画に詰まっていると感じました。ピースボートのステーションサイトを見て、過去の水先案内人ゲストを調べてみると、紅白歌合戦に出演されたGAKU-MC(ガク・エムシー)さん、アーティストのRicky-G(リッキー・ジー)さんやダンスボーカルユニットEXILEのUSA(エグザイル・ウサ)さんも水先案内人ゲストとして乗船しています。EXILEのUSAさんは、船上で音楽ライブやダンス甲子園を企画し、船内全員を巻き込んで旅を盛り上げたそうです。

エンターテイナーな方の企画も楽しいですが、異なる面白さがある水先案内人ゲストもピースボートには乗船しています。それは【学び】の水先案内人ゲストです。

世界遺産や社会情勢について話してくれる、その道の専門家による企画も意義深いです。ピースボートの船で訪れる国の専門家が乗ることがあり、中東に行く際には、中東専門家の高橋和夫さんという放送大学の教授が乗船し、分かりやすくレクチャーをしてくれます。現在の紛争の話や現地の生活について、若者の人生を考えるための未来企画、環境に配慮したエコ生活を帰国後に取り入れるレクチャーなどもありました。内容は様々で、ゲストの講演会はあらゆる知識の宝庫であり、考えが広がっていきます。

水先案内人パートナー

ピースボートの船内では、水先案内人ゲストともっと深くお話をしたいと思った場合、「水先案内人パートナー」と呼ばれるピースボートチームに関わることも楽しいかもしれません。水先案内人パートナーは、ピースボートの船内で募られ、ゲストの企画をお手伝いすることになります。関わることで、より詳しい話を水先案内人ゲストから聞けるほか、一緒に食事をして親交を深めることもできます。

季節に応じたピースボート企画/大型企画

船内の大型企画

船内では、全乗客が対象となる大型企画があり、さまざまなイベントがピースボートの旅中に行われます。私が最も楽しんだのは、乗客800人以上で行う「洋上大運動会」です。

ピースボート洋上大運動会

ピースボートの船上で800人も集まって運動会ができるのかと思いがちですが、デッキでは約800人が集まることができます。世代もバラバラの老若男女が、4つの団に分かれ、大縄跳びや綱引き、パン食い競争、二人三脚などの競技を1日かけて行いました。各団で団長や応援団長も選出し、応援合戦も行います。運動会用に団旗を作成するなど、大人たちの本気を感じる運動会です。このような大型企画は、ピースボート船内で実行委員が立ち上がって計画しています。運動会開催の10日前ごろから、船内では競技や応援の練習、団旗作りが始まります。

年齢に関係なく、若者もシニアも一緒になって運動会の準備を楽しんでいます。もちろん、参加したくない人は無理に参加する必要はありません。私はこの大運動会で、究極の世代間交流を感じました。運動会がきっかけで、たくさんのシニアとのつながりができました。

季節に応じたピースボート企画

ピースボートには、季節を感じられる企画もあります。常夏の洋上では「夏祭り」が行われ、船上で出店が用意されたり、お化け屋敷が設置されたりします。夕方には、参加者全員で盆踊りを楽しむこともあります。「紅白歌合戦」をピースボートで行う際には、出演者を募集して選考会が行われることもあります。また、年末のピースボートクルーズでは、洋上で年を跨ぐ「カウントダウンパーティー」が開催されます。「クリスマスパーティー」では、寄港地で仕入れたものを持ち寄ってプレゼント交換会も行われます。

有志の実行委員が船内を盛り上げる

大型企画を支える縁の下の力持ちが実行委員です。この実行委員は、乗客からの有志によって構成されます。そのため、同じイベントでもクルーズによって内容がアレンジされています。手作り感と思いやりに溢れる企画内容が特徴です。イベントを成功させるためにみんなが本当に一生懸命に取り組んでいます。自分たちが作り上げた企画で喜ぶ乗客の姿を見て、感動する実行委員もいます。みんなで支え合い、思いやりを持ち合う心がピースボートクルーズにあります。このような実行委員の存在は、とても大きいでしょう。

自主企画と呼ばれるピースボートイベント

ピースボートの船内では、毎日100近くのイベント企画が開催されています。この中で、大半を占めるのが「自主企画」と呼ばれるものです。「自主企画」の企画者は乗客で、自分の趣味や特技を活かして、船内で簡単に企画を立てることができます。900人近い乗客が一つの船に集まっているため、様々な自主企画が行われます。

例えば、「初心者ギター教室」「ゴスペルをしよう」「聖書を読む会」「マジック同好会」などがあります。軽い企画としては「みんなで大富豪しましょう」というものもあり、ヘンテコな企画も見受けられます。「海に向かって本気でカメハメ波を打とう」や「女子のお団子ヘアーにボールペン何本刺さるか実験」など、もう何でもありです(笑)。これらは一見くだらないかもしれませんが、自主企画は出会いの宝庫だと思います。真面目な企画でもくだらない企画でも、多様な人と出会い、考えを共有することができるのがピースボートの自主企画の魅力です。これは普段の生活では味わえない感覚でしょう。

GET英会話(グローバルイングリッシュ/エスパニョールトレーニング)

英語ができる世界一周

GETとは「Global English / Español Training」の略です。世界一周をしながら英会話やスペイン語会話のスキルをアップすることができます。せっかく世界を旅しているので、外国語に触れる時間を作るのも良いと思います。

有料・無料の英会話教室があり、自分の好みに合った英会話のレッスンを受けることができます。無料の教室もほぼ毎日のように開講されていました。単に海外に行くだけでなく、英語やスペイン語に興味を持ち、寄港地ですぐに実践することで、ピースボートの旅で学びがより深くなります。

寄港地紹介

世界一周中にピースボートが訪れる国々を「寄港地」と呼んでいます。寄港地を訪れる前にたくさんのことを「知る」企画があります。20ヵ国以上を訪れるとなると、あまり知らない国もあり、基礎情報やお土産、観光名所などを紹介してくれます。訪れる国や寄港地のことを全く知らなくても、ベーシックな情報が船内で手に入ります。